こんにちは、音楽制作のすべてを扱うブログです 🎧
前回の記事のセッティングで録音までうまくいったなら、次はこんな疑問が湧いてくるはずです。「ちゃんと歌えたのに、オケに乗せるとなぜか浮いて聞こえる…」。これがまさにミックスが必要な瞬間です。そして朗報をひとつ — ボーカルミックスの半分以上は、たった2つのツール、EQとコンプレッサーで解決します。
💡 今日の要点3行まとめ
1. EQは「引く」ことから — ローカット80〜100Hz、こもりは200〜400Hzをカット
2. コンプの開始値:レシオ 3:1〜4:1、ゲインリダクション 3〜6dB
3. 順番はカットEQ → コンプ → ブーストEQ
📋 目次
① ミックス前の準備 — まずフェーダーから
② EQとは何か+第1段階:引き算(ローカットとこもり除去)
③ ボーカル周波数マップ
④ コンプレッサー:数字から始める
⑤ EQ第2段階:足し算(存在感とエア感)
⑥ 初心者がやりがちなミス3つ
⑦ Q&A
① ミックス前の準備 — まずフェーダーから 🎚️
プラグインを挿す前に、オケとボーカルの音量バランスから合わせましょう。意外にも「ミックスが変」の半分は、ただの音量問題です。オケを流しながらボーカルのフェーダーをゆっくり上げていき、歌詞がはっきり聞こえ始めたところで止める — そこが出発点です。モニター音量は普段の会話くらいの大きさで。大音量で聴くと何でも良く聞こえて、判断が鈍ります。
② EQとは何か — そして第1段階は「引き算」です ✂️
まず概念からきちんと押さえましょう。EQ(イコライザー)とは、音の特定の周波数帯域の音量だけを選んで上げ下げできるツールです。
私たちが聴くすべての音は、実はさまざまな高さの成分が重なった結果物です。声ひとつにも、土台になる低い成分(低域)、言葉の芯になる中間の成分(中域)、息づかいや輝きのような高い成分(高域)が同時に含まれています。周波数(Hz)はこの成分の高さを表す単位で、数字が小さいほど低い音、大きいほど高い音。オーディオではおおよそ20Hz〜20kHz(人間の可聴範囲)を扱います。
EQはいわば、この成分別ボリュームつまみです。全体の音量を上げ下げするのではなく、「低い成分だけ減らす」「高い成分だけ増やす」ことができる。だから、こもった声からこもりだけを取り除いたり、抜けの悪いボーカルに明瞭さだけを足したりできるわけです。
DAW付属のパラメトリックEQには、つまみが3つあります。
- 周波数(Frequency):どの高さの成分を触るか
- ゲイン(Gain):どれだけ上げ下げするか(dB)
- Q:どれだけ狭く/広く触るか — Qが狭ければピンセット、広ければ筆だと思ってください
概念はこれだけです。さて実践ですが、初心者はEQを「良い周波数を持ち上げる道具」と考えがちなのに対し、プロは逆に使います。問題のある周波数を引くのが先です。
- ローカット(ハイパス):80〜100Hzより下をカットしましょう。この帯域には声の情報がほとんどなく、ランブルだけが住んでいます。ランブル(rumble)とは、エアコンのうなり、マイクスタンドを伝ってきた振動、足音のような超低域の背景振動音のこと。耳にはよく聞こえなくても、ミックスのヘッドルームを食いつぶす主犯です。低い声の男性ボーカルは80Hz、女性ボーカルは100Hzあたりが無難な開始点。
- こもり(マッド)除去:マッド(mud)は文字通り「泥」。音が泥に浸かったようにこもって団子になる現象で、ボーカルではほとんどの場合200〜400Hzに住んでいます。この帯域を2〜4dBほど緩やかに削ってみましょう。ただし削りすぎると声が痩せるので、「こもりが消えた地点」で止めるのがコツです。
- 箱鳴り:狭い部屋で録音した場合、400〜600Hzに箱の中で歌ったような響きが残ることがあります。Qを狭くして問題のポイントを探して削りましょう。
③ ボーカル周波数マップ 🗺️
各帯域の役割を整理するとこうなります。
| 帯域 | 性格 | 処理 |
|---|---|---|
| 〜80Hz | ランブル(情報なし) | ローカット |
| 200〜400Hz | こもり・マッド | 2〜4dBカット |
| 1〜3kHz | 存在感・明瞭さ | 必要なら軽くブースト |
| 5〜8kHz | 子音・明るさ / 歯擦音 | ブースト or ディエッサー |
| 10kHz〜 | エア感・輝き | 軽くブースト |
この表は正解表ではありません。声によって問題のポイントは違うので、どこを触るべきかを探すコンパスとして使ってください。
④ コンプレッサー:数字から始める 🔧
コンプレッサーは「大きい音は抑えて、小さい音を相対的に持ち上げて」ボーカルの音量を均一にするツールです。オケの上でボーカルが聞こえたり聞こえなかったりする問題を解決してくれます。
各つまみが何をするのか、簡単に整理するとこうです。
- レシオ(Ratio):大きい音をどれくらい強く抑えるかの強度。4:1なら、基準線を4dB超えた音が1dBだけ超えるように抑えられます。数字が大きいほど強く潰れます。
- アタック(Attack):大きい音が入ってきたとき、抑え始めるまでの反応速度。遅めにすると音の最初のアタック感が生きて通過し、速くするとそこまで潰れます。
- リリース(Release):抑えた手を離す速度。遅すぎると次の音まで抑えられたまま苦しくなり、適切なら自然に元の大きさへ戻ります。
- スレッショルド(Threshold):コンプが動き始める基準線。この線を超えた音だけが抑えられ、下にある音には触れません。下げるほど多くの音が潰れます。
開始値はこう設定しましょう。
- レシオ:3:1 〜 4:1
- アタック:10〜30ms(中間)— 速すぎると声のアタック感まで潰れます
- リリース:40〜80ms(中〜速め)— 言葉の合間に針が0へ戻る程度
- スレッショルド:ゲインリダクションメーターが大きい部分で3〜6dB振れるまで下げる
もしこれらの概念が今ピンと来なくても、いったんそのまま進んで大丈夫です。上の開始値をそのまま挿して使っているうちに、ある日「アタックを遅くしたら声が前に出てきた?」という瞬間が来ます。こういうものは文章で理解するのではなく、経験を積みながら耳と一緒に覚えるのがベスト。知識で終わる音楽知識には意味がありません — 実際に挿して、回して、聴いてみてください。
設定後は必ずメイクアップゲインで、減った分の音量を補償しましょう。コンプをかけると音が大きくなって良くなったと錯覚しやすいですが、かける前と同じ音量に合わせて比較しないと正確な判断はできません。
実はコンプレッサーは、ここで紹介した「音量を均す」よりずっと深くて重要な役割を持つツールです。アタックとリリースだけでボーカルのニュアンスやグルーヴまで彫刻できます。ただ、今の段階ではこの程度の知識で十分だと思います。まずは上の開始値で手に馴染ませるのが先ですから。深い話は慣れてきた頃に、改めて扱います。
⑤ EQ第2段階:足し算 — 最後に少しだけ ✨
カットとコンプが終わってから、ようやくブーストの出番です。1〜3kHzを1〜2dB上げるとボーカルがオケを突き抜けて前に出てきて、10kHz以上を軽く上げると上品なエア感が生まれます。原則はひとつ — ブーストはカットより常に控えめに。たくさん上げたくなったら、大抵どこかの削りが足りていません。
⑥ 初心者がやりがちなミス3つ ⚠️
- ソロだけ聴いて判断する — ボーカルだけソロで聴くと派手に作りたくなります。でもボーカルはオケと一緒に聞こえる音。EQ・コンプの調整は必ず全体のミックスを流しながら。
- プリセットを鵜呑みにする — 「Vocal」プリセットは他人の声基準です。出発点としてだけ使い、耳で調整しましょう。
- 一度にたくさん触る — 3dB以上動かしていたら一度手を止めて。ミックスは1〜2dBの積み重ねです。
⑦ Q&A 💬
Q. EQとコンプ、どちらを先に挿すべき?
A. 絶対の正解はありませんが、入門者にはカットEQ → コンプ → ブーストEQの順をおすすめします。問題の周波数を先に整理しておかないと、コンプがランブルやこもりに反応して誤作動するからです。
Q. 無料プラグインでもできますか?
A. できます。DAW付属のEQとコンプで今日の内容はすべて可能です。有料プラグインは「同じことをより快適に」してくれるだけで、基本を代わりにやってはくれません。
Q. いくら触ってもプロの音源みたいになりません。
A. それが普通です。プロの音源は良い録音+ミックス+マスタリング+長年の経験の合算です。前回の記事の録音セッティングがきちんとできているか、まず見直してみてください。ミックスは録音を磨くものであって、作り変えるものではありません。
おわりに ✍️
今日の内容を一行に圧縮するとこうなります。
「引いて(ローカット・マッド)、均して(3:1、3〜6dB)、最後に少しだけ足せ」
この順番を守るだけで、「カラオケ音源」から「それっぽい音源」までは確実に行けます。次回は、ボーカルをさらに滑らかにするリバーブとディレイ — 空間系エフェクトの基礎を扱います。質問はコメントでどうぞ。読者登録も励みになります 🙏
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